「東京ジャズメモリー」で時代を感じる

「東京ジャズメモリー」(シュート・アロー著)を読んだ。内容は、1980年代に大学ジャズ研でピアノを弾いていた著者(現在はサラリーマン)が、当時入り浸っていたジャズ喫茶などを自身の体験や思い出を交えて紹介するというもの。

私自身は、80年代はまだ大学生ではなかったし、東京など未知の世界だったので、この時代のジャズ喫茶やジャズ文化というのはリアルタイムでは知らない。しかし今や世界一とも言われる日本のジャズ文化を根付かせたのは、この時代とその少し前の時代のジャズファンだろうと考えると、1980年代の東京のジャズを抜きにしてジャズを語ることはできないと思う。

著者のシュート・アロー氏は、「1981年日本ジャズ最盛期説」を唱える。実際、この本で紹介される店のほとんどは、今は存在しない。この本に綴られた1980前後のジャズ体験談は、貴重だ。1980年代の日本のジャズの熱さはある種「燃え尽きる」ことに向かっていたのかもしれないが、実際は日本でジャズという文化が燃え尽きたということは全くない。もちろん消滅した店などは少なくないし、音楽を取り巻く商業的環境がますます厳しくなってきているのは素人にもわかるのだが、毎晩のようにジャズのライヴやジャムセッションが行われ、ファンが集い、盛り上がっているのも事実。スタイルや規模などが変わったとしても、本書「東京ジャズメモリー」の時代の根底を流れる日本人の「ジャズへの愛」は、消えることなく、今やむしろその輝きを増し続けている、と私は信じる。

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