BITCHES BREW エレクトリック・マイルスのすべて

中山康樹「Bitches Brew エレクトリック・マイルスのすべて」。古本で入手したまま、積読にしていたやつ。中山氏によるエレクトリック・マイルスに関する著作はいくつかあるが、体系的・網羅的に読みやすく書かれたこの本は、その中でも特に重要な作品だと実感した次第。

その前に、Miles Davisの名盤”Bitches Brew”の邦題の「ビッチェズ・ブリュー」という意味不明なカタカナは何がどうなって生まれてきたのか、私はいまだに全く理解できん。大好きな中山康樹すらその著作で「ビッチェズ・ブリュー」と綴るもんだから「お前もか」と思っていたのだが、この本を開いて「あとがき」を眺めたところ、「どう考えても『ビッチズ・ブルー』だが、通例に従い『ビッチェズ・ブリュー』と綴ることにした」旨が述べられており、こちらの思いを100%書いてくれていたので胸をなでおろした次第。やはり、中山康樹は最高だ。

さて、内容。Part1はMiles Davisの「各国貴重盤」。カラーで各国で発売されたアルバムジャケットが紹介されており、眺めているだけで楽しい。

Part1の写真を眺めた後に目次。この演出で、期待が高まる。目次に続くPart2は「pre-electric age」。”Miles in Berlin”の後、マイルスがどのようにエレクトリックなスタイルに変わっていったのか、その背景を考察しながらストーリーが進んでゆく。

そしていよいよPart3が「エレクトリック・マイルス全作品紹介」。”Circle In The Round”から”Pangea”までのアルバムを1枚1枚、詳しく解説。正確な記録が残されていない各曲の録音日に関する考察までなされており、すごい内容だ。

Part4は「エレクトリック・マイルスを彩る9人のミュージシャン」。これまた重要なテーマで、興奮が止まらん。以降のPartも、エレクトリック以後のマイルスやエッセイなど、興味深い内容が続く。

エレクトリック・マイルスにフォーカスして、ここまで深掘りした本は、ホンマにすごい。1994年の本だが、今の時代では、こんなにマニアックな内容では出版は難しいんじゃないか。

それにしても、エレクトリック・マイルスをリアルタイムで初めて聴いた人々の気持ちはどんな感じだったのか。マイルスも中山康樹も他界した今となっては、へなちょこジャズファンな私としては追体験を楽しむしかない。中山氏のマイルス本を読んで、マイルスを聴く、を繰り返す。まぁこれがホンマに楽しいわけですわ。

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