DuoRama Standards

布川俊樹(gt)&納浩一(ba)の”DuoRama Standards”。このコンビによる最新アルバムで、タイトル通りスタンダード曲を中心に演奏したアルバム。
DuoRama Standards
全曲を通して、布川節が炸裂という感じであるが、特にこのアルバムでは太い音色で男らしいサウンドが印象的。やはり、コーダルなプレイでありながらコンテンポラリーな色彩を感じさせる独自のスタイル。納氏のベースも、グイグイと前進するグルーヴを生み出し、自由に歌う感じ。

ちなみに、このアルバムは布川氏によるギター教則本とも連動しており(教則本は今のところ、オンラインや書店での販売はされていない模様)、これがまた、とても勉強になる。私がバイブルとしている「続・目からウロコのジャズギター」(菅野義孝・著)とはかなり異なるアプローチやフレージングが多いし、わかりやすい解説もついているので、視野を新たに広げることができる。「はぁー、そういう考え方で、こういうフレーズが出てくるのか」と納得しながら読み、聴くことができる。Lydian7thとか裏コードのマイナーコンバージョンとか、繰り返し姿を現すフレーズなんかもあり、プロもある程度はパターン的な発想でアドリブを組み立てているのだということもわかってくる。よっしゃ!(何が?)

おっ、そういえば、もう秋(今更!)。芸術の秋、意識的に演奏と鑑賞を堪能しよっと。

Javi “GDjazz” Pereiro “Black May”

Black MayというアルバムをMP3で入手した。演奏は、Javi “GDjazz” Pereiro with E.J. Strickland, Josh Ginsburg & Mike Moreno。ほとんどよく知らないプレーヤーばかりだが、ギターがMike Moreno。視聴してみて、いい感じだったので買ってみた次第。

インターネットで検索してみると、Javi Pereiroはスペイン出身のトランぺッターらしい。1982年だから、若いプレイヤーであるな。

Black May
このアルバム、買って大正解だった。トランペットのJavi Pereiroはバップな感じで、しかし全く古さを感じさせない良いサウンド。おしゃれなBGMとしてもイケるだろう。

ギターのMike Morenoが、これまたいい感じで弾いている。個人的には、リーダー作よりも、このアルバムでの演奏の方が好きだ。コンピングは心地良い音色で綺麗にコードを鳴らし、ソロはMike Moreno節であるがバンドのサウンドに自然に溶け込んでおり、かっこよすぎる。Mike Morenoは、実はサイドマンとしてこそ、魅力的なのではないか?違うかな?

ヘビーローテーションで聴いている。この内容で900円とは、信じられない安さ。ありがたい話じゃ。

Charlie Haden “Nocturne”

この夏は、Charlie Hadenをよく聴いた。そんな時に、そのCharlie Hadenの訃報が舞い込んできたのだった。ちょうど、このNocturneを入手して聴いていたところだった。

Nocturne

このアルバム、夏の夜にはピッタリである。ジャズというよりはラテンな曲目ばかりなのだが、まぁそんなことはどうでもいい。夏の夜に、あえて冷房などかけずに、キンと冷やした飲み物片手に、これを聴く。気分は、もうラテンアメリカ。昼間の情熱もさめること半ば、音楽と飲み物でクールダウンしながら何かの幻想を見る、そんなラテンアメリカにトリップ。ま、私は南米には行ったことないけど、そんな気分に浸れるアルバムなのだ。

こんな、目の前に景色が広がってくるような演奏って、ホンマすごいことだ。Charlie Hadenがすごいのか、Gonzalo Rubalcabaがすごいのか。どっちもすごいんでしょうね。下手なギターでも、そんなことができるようになりたい。

Charlie Hadenに合掌しつつ、今夜もこのアルバムを聴いて、とろけるような気分で寝よう。

Ron Carter 「ジム・ホールの思い出」

ジム・ホールの想い出

先日も触れたが、Ron Carterの「ジム・ホールの思い出」。Ron Carter(ba)、Peter Bernstein(gt)、Larry Coryell(gt)。ジャケットもかっこいいので、大きめの画像を貼り付けちゃおう。

1月の亡くなったJim Hallとともに来日するはずだったRon Carterが、Jimとのデュオの代わりにトリオで来日し、追悼ライブを行ったものの録音。

とにかくめちゃくちゃ素晴らしい名盤だ。もう、一曲目With A Song in My Heartの冒頭から、心地よいサウンドにうっとりしてしまう。このトリオが生み出す空気に、一気に引き込まれてしまう。

Ron Carterの語りは初めて聞いた。渋い。

All The Things You Are、Alone Together、いずれも言うまでもなく素晴らしい名演。Alone TogetherはJim Hall、Ron Carterのデュオの歴史的な録音を思い出さざるを得ないが、ここでは、それに全くとらわれず、このトリオならではの音楽をこれでもかと展開してくれる。美しすぎる。

There Will Never Be Another You、この曲って、こんなにエレガントだったのか!どっちかというと楽しい、もっと言うと能天気な雰囲気の曲だと感じながら聴いたり弾いたりしてきたのだが。この演奏で美しく流れるメロディやソロを聴いて、大きく認識を改めた。

St.Thomasもアルバム”Alone Together”での名演に匹敵する美しい演奏。上述のAlone Togetherと同様、歴史的な名演に引きずられない新たなサウンド。どこかの楽園にいるかのような夢見心地で聴いてしまう。

最後はBags Groove。ジャズブルースかくあるべし、という見本のような演奏。ただただひれ伏すばかり。

ヘビーローテーションで聴きまくり。たまらん。

Pat Metheny “UNITY BAND”

Unity Band
今さらながら、Pat MethenyのUNITY BAND。普段、あまり新しいアルバムって買わないから、このアルバムも発売から2年ほど経ってようやく買った次第。

日常的にPat Methenyはよく聴いているが、いやぁやっぱりこのアルバムも、イイ。アコースティックやピカソを含む複数の種類のギターを使い分けており、多彩なサウンドを順繰りに楽しめる。

オープニングの”New Year”で、一度聴いたら忘れられないようなマイナーキーのメロディアスなテーマとテンポよく引き継がれるソロで疾走感を味わい、いきなり引き込まれる。そこから最後の”Breakdealer”まで、高揚した気分のまま一気に聴いてしまう。

ドラムのAntonio Sanchezは、以前BuffaloでPat Metheny Trioのライブで聴いて、こりゃ上手いドラマーやなぁと思っていたらあれよあれよという間にビッグなプレーヤーになった。このアルバムでも、素晴らしいリズムと音色を聴かせる。Chris Potter、Ben Williamsともに男らしいプレイでグイグイと進んでゆく。

このUnity Bandの進化の先にあるUnity Groupの”Kin”も、聴いてみたい。でも、今はUnity Bandを何度聴いても楽しいので、Kinはしばらく先かな。

Kin

Pat Metheny Trio Live

12月あたりに、iPodに入れていたPat Methenyをたまたま聴いてみて、なんか久しぶりにハマってしまい、ヘビーローテーションで聴いている。特にこのTrio -> Liveは、ものすごいハイテンションで信じられないようなインプロヴィゼーションを聴かせる感動的なアルバム。10年以上前に入手し、以来、繰り返し聴いてきたものだ。2枚組だが、サウンド的にはDisc1の方が好みだ。

Trio Live

耳コピーもめんどくさいなと思っていたら(それがダメなんだが)、本棚に保管していたJazz Guitar BookのPat Metheny特集にこのアルバムのAll the Things You Areのコピー譜が載っていた。よっしゃ!・・・しかし、弾いてみても、なんか、全然雰囲気が出ない。やはり、Patのノリで弾かないと、音符だけを追いかけて猿真似してもダメなのであるなぁ。当然か。

jazz guitar book[ジャズギターブック] Vol.24 (シンコー・ミュージックMOOK)

最近のアルバムは持っていないけど、なんか新しいのも聴きたくなってきたなぁ。

Jesse van Ruller “Live at Murphy’s Law”

マーフィーズ・ロウ
もうずっと前に入手したCDであるが、最近、何度か繰り返し聴いた。ギタートリオというフォーマットであり、ギターサウンドを満喫できるし、内容も充実している。

これを聴いて感心してしまうのは、Jesse van Rullerの音色の美しさ。ギターがいいのか、アンプがいいのか、テクニックがいいのか、うーん、やっぱりテクニックなんだろう。何といってもピッキングが素晴らしい。16分音符のレガートなフレーズは、美しく粒が揃って磨き上げられた音が生命をもった川のように流れてきて、グッと胸に迫ってくる。これは、ハマってしまう。

曲目も、とても魅力的だ。心地よいテンポのスタンダート、ビ・バップ中心。

ヨーロッパのプレイヤーならではの空気感、ややジャズ本来の土臭さは薄いのかもしれないが、素晴らしいリズム・ハーモニー・メロディーを聴かせる名盤だ。

Miles Davis “Kind of Blue”

なんか、ここまでの名盤をあらためてブログに書くのは、恥ずかしい気がするな。

正直に白状すると、Miles Davisの名盤 “Kind of Blue”、実は、ちゃんとした(?)CDで持っていなかった。友人の誕生日に買ってプレゼントしたりしたことはあるが、私自身は持ってない、と(笑)。その代りに、ジャズを聴き始めた十数年前にレンタルCDを借りてきてMDに録音したものを、今まで聴いていたのだった。

師匠Bob Sneiderからの宿題で、生まれて初めて耳コピーなる行為をしたのも、この盤の一曲目”So What”。この曲のMilesのソロをコピーしたのだが、今となってはわかりやすいソロも、当時は必死で取り組んで譜面におこしたものだった。今でも、このMilesのソロはほとんど憶えている。

最近、ようやくCDをちゃんと買って、あらためて聴き直してみると、以前は聞こえてこなかった音もいろいろ聞こえてくる。So What、非常にシンプルな構成の曲ながら、ここまで深みのある音楽として響かせるというのは、やっぱり凄い。モードという手法の可能性に目をつけて一つのスタイルにまで昇華させたMilesは、やはり凄い。

でも、なぜか、ギターで今、モードの曲を弾く気にはなれない。私には難しい。Bob Sneiderのレッスンでこの曲のソロをやった時には、すぐに小節数がわからなくなって困ったが、そういう問題以前に、どうもモードでのソロは今の私には難しい。もう一度、Milesのソロを復習してみるか。

カインド・オブ・ブルー+1

Kazuhiko Takeda Trio “I thought about you”

I Thought about You / Kazuhiko Takeda Trio

師匠・竹田一彦氏の新作。遂にギタートリオによる作品。前作までと同様、スタンダードが中心。

Amazonで予約してたけど、手元に届いたのは発売日よりだいぶ遅かった。ま、ええか。いや、良くない。こんなすごい名盤、一日でも遅れて聴き始めるのは大きな機会損失だからだ!

とにかく素晴らしい。暖かいのに決して甘ったるくない音色、明快で色気のあるフレーズ、驚くほどカラフルでお洒落なコード、そしてリスナーに与えるグルーヴ。ジャズギターの一つの理想だ。一曲目I Thought about Youから最後のSt.Louis Bluesまで、この心地よいサウンドに酔いながら、あっという間に聴いてしまう。

今年77という年齢を全く感じさせないこの名演、本当に世界に誇る巨匠。これまでのアルバムの演奏をいくつか聴いていると、なんか、今も進化し続けられているようにすら感じる。それくらいに、この最新盤は素晴らしい。

この珠玉の一枚を聴かずにジャズギターを語ることなんて、想像できない。

Keith Jarrett “Bop-Be”

びわこジャズフェスティバルで演奏する予定のBop-Be、作曲者Keith Jarrett自身による演奏が聴きたくて入手。American Quartetによる最後の作品(1977)。Keith Jarrettにとっては、ECM以外での最後の録音(ただし、1990年代にリコーダーのMichala Petriとのクラシック作品の録音がRCAにあるのが例外)。

バップ・ビー

  • Keith Jarrett (pf)
  • Dewey Redman (ts)
  • Charlie Haden (ba)
  • Paul Motian (ds)

かなりオモロい感じのアルバムだ。各パートが綺麗によく聴こえる録音。特にベースがよく聴こえて、気持ちよい。

1曲目”Mushi Mushi”。ムシムシってナンデスカ?以前、米国で日本語で「もしもし」って電話してたらスペイン語圏の友人が「ムシムシ」と言って真似してた。ムシムシに聞こえるらしい。このMushi Mushiはそれなのか?不明。ま、いいか。

Charlie Hadenによる”Silence”は、タイトル通り、静かな印象の曲。ただし、バラードという感じではない。

で、アルバムタイトル曲はサックスを除いてピアノトリオでの演奏。Keith Jarrettは延々とアドリブソロ。ノリまくっている。次のコーラスの途中からのCharlie Hadenのベースソロは、どういう譜割りのつもりなのか、何度聴いてもよくわからん。ドラムとピアノのリズムに乗っかって自由に弾いている感じ。この曲は、なんかおちょくったような、冗談めいた雰囲気を持っていると思う(タイトルからして、なんかふざけた感じだ)が、このトリオでの演奏は全然ナメた感じじゃなくて、洗練されたリズム・ハーモニー・メロディーを聴かせる。さすが一流だ。

続いての”Pyramids Moving”はサックス+パーカッションでのフリージャズ風の曲。続く”Gotta Get Some Sleep”は再びカルテット。

そして”Blackberry Winter”には、完全に打ちのめされた。L.McGlohonとA.Wilderによるバラード作品、ここではまたピアノトリオによる演奏。この、限りなく美しい濃密な音楽。これは一体、何なんだ!神懸ったドラムとベースのリズムに包まれて、ゆったりと歌うKeith Jarrettのピアノ、しかし決してサラリと軽く流れることがない、ひたすらに濃い時間。もう一回叫ぶけど、これは一体、何なんだ!矛盾する表現だが、このリラックスとヒーリングを生み出す、もの凄い緊張感。これを聴いて、Keith Jarrettが1996年頃から慢性疲労症候群に悩まされたというのが、わかる気がする(※)。彼は、これだけ全身全霊を捧げて音楽を創り出していた(いる)のだ。

(※)医学的根拠とは関係なく、あくまでリスナーとしての印象を書いた。慢性疲労症候群は原因不明の疾患で、単なる心身の「疲れ」とは異なるものらしい。

Blackberry Winterって造語かと思ったら、米国南部の春の寒い日を指す言葉なのね。北部に住んでいたので、一度も聞いたことなかった。北部は、春でもそこそこ寒かったし。ま、ピアノトリオによるこの演奏は、そんなタイトルや歌詞を知らなくても、ひたすら美しいのだが。

でも、やっぱりこれでアルバムを締めくくるのではなく、最後はCharlie Haden作曲の”Pocketfull of Cherry”。Blackberryの次はCherryですか。American Quartetらしい演奏で、明るく楽しく終わる。

複数の編成が入れ替わりで出てくるし、異なった曲想の曲が盛り込まれており、盛りだくさんな内容の一枚だ。大満足。