すごいジャズには理由がある ― 音楽学者とジャズ・ピアニストの対話

すごいジャズには理由(ワケ)がある──音楽学者とジャズ・ピアニストの対話

「すごいジャズには理由がある ― 音楽学者とジャズ・ピアニストの対話」(岡田暁生、フィリップ・ストレンジ)を読んだ。クラシックに関する研究や著書で有名な音楽学者の岡田氏がジャズ・ピアニストのストレンジ氏にインタビューをするというスタイル。

章ごとにジャズのプレイヤーを取り上げており、彼らが「どのようにすごかったのか」をフィリップ氏が語り、岡田氏の質問に答えて対話してゆくという内容。取り上げられたプレーヤーは

  • Art Tatum
  • Charlie Parker
  • Miles Davis
  • Ornette Coleman
  • John Coltrane
  • Bill Evans

という順であり、ジャズの歴史の流れに沿った話が展開される。

一冊丸ごと、とても面白いのだが、個人的にはフリー・ジャズに関する考察(Ornette Coleman、John Coltrane)やCharlie Parkerの章などが特に興味深かった。「Charlie Parkerのどういう点がすごいのか?」については、師匠のPaul Hofmann氏のレッスンでも議論したことがあったのだが、ストレンジ氏はまた少し異なった視点での回答を示している。

また、この本で説明された内容について、文字だけで伝わりにくいものについては、Youtubeでストレンジ氏による実演が公開されている。動画はやや冗長な印象もあるが、本の解説と併せて見ると、なかなか楽しめる。

SERVE AND VOLLEY

Serve & Volley

Rochesterでの師匠Bob Sneider (gt) & Paul Hofmann (pf) の2010年のデュオ作品。ギターもピアノも、もう、素晴らしすぎて、あらためてため息をついてしまった。

Bob師匠は、日本人とは全く異なるリズム感とかスウィングとかを体現するギタリストであり、このCDでも素晴らしいノリとビバップに根差した歌い回しでグイグイと音楽を奏でる。シンプルなシングルラインのフレーズでも、これだけ生命力をもってサウンドするのだな。Paul師匠は耽美なサウンドが持ち味であるが、このデュオにおいてはそのスタイルは不変でありながらBob師匠のスタイルにもインスパイアされたパルスを聴かせる。デュオによってソロ+ソロ以上の音楽が創造される・・・常に相互にリスペクトしている二人がなせる業だ。

聴きまくって、勉強しよう。

ギターの非日常

金谷幸三、キャロリーヌ・ドゥリューム、稲川雅之による「ギターの非日常」を聴いてきた。2016年2月6日(土)、ザ・フェニックスホール。

  • エレキギター独奏(一部二重奏)
    トリスタン・ミュライユ: ヴァンピール!
  • 11弦ギターと6弦ギターによる二重奏
    ジョン・アダムス: チャイナ・ゲーツ
    ジャン=フィリップ・ラモー: 三つの鍵盤的小品
  • 11弦ギター独奏
    レオ・ブローウェル: 簡素な練習曲より18番
    エリック・サティ: ジムノペディ3番
    レオ・ブローウェル: 簡素な練習曲より17番
    エリック・サティ: ジムノペディ1番、グノシェンヌ3番
    アルノー・デュモン: ラヴェル賛歌のように
    ジョン・ケージ: 風景の中で
  • アコースティック・ギター二重奏
    ジャック・ボディ: アフリカン・ストリングス
  • 19世紀ギター二重奏
    ヨハン・セバスチャン・バッハ: ゴルトベルク変奏曲よりアリアと13の変奏
    フィリップ・グラス: めぐりあう時間たち

少し早めに会場に到着したが、チケット精算で行列(しかも遅い)。チケット精算して会場入りの行列も、長い。

フェニックスホールに来たのは、20年くらい前の大井浩明氏のリサイタル以来のような気がする。エスカレーターとエレベーターでホールに入り、最前列を確保。よしっ。パンフの曲目解説などをしばらく読んでからふと周囲を見たら、ほぼ満員。すごいこっちゃー。

さて、19:00になり、開演。まずは金谷氏がエレキギターで独奏開始。いい感じで音楽が進む。数分の演奏の後、キャロリーヌ・ドゥリューム氏が合流。しかし、どうやら機器に不具合の模様で、生音しか出ない。ドゥリューム氏は演奏しながらシールドの接続を確認するが、最後まで生音のみとなってしまった。残念。

続く二重奏で、稲川氏登場。ジョン・アダムズの作品は広くは「ミニマル」と呼ぶのであろうが、細かく言うと「ポストミニマル」という作風であり、非常に美しい響きが印象的。この「チャイナ・ゲーツ」はピアノ曲であるが、金谷氏のアレンジにより、ギターの響きを最大限に活かした曲となった。浮かんでは消える儚い響きが、少しずつ姿を変え、また浮かんでは消える。ひとたび演奏が始まると、このゆるやかな音の流れが永遠に続くような気がして、この曲に「終わり」があることが想像できない気分になる。不思議だ。でも、終わりはあった(笑)。

続く11弦ギター独奏は、特に素晴らしかった。ブローウェルの練習曲の響きの美しさは驚きであった。11弦ギターによって、このシンプルな作品がこんなに表情豊かに鳴るとは。サティーも然り。そして、金谷氏が得意とするケージ「風景の中で」。これもまた、先のジョン・アダムズ作品と同様に、流れゆく音の波に聴衆も溶け込んでしまうような心地よい音楽。このような音楽を紡ぎだすギタリストは、他にいるのだろうか。

休憩後、まずはドゥリューム氏と金谷氏のアコギデュオ。アフリカン・ストリングスはタイトル通り、アフリカの弦楽器の音をヒントにした曲。オリジナルはクラシックギター二重奏とのことだが、この日はスチール弦のアコースティックギター二重奏。

プログラムの最後は、19世紀ギター二重奏。バッハのゴルトベルク変奏曲のギター二重奏というのは、なかなか面白い。どうせなら、全曲やってもらえるともっとよかった。グラスの「めぐりあう時間たち」は、映画音楽。ここで、ステージ背景の半透明のカーテン風の布が上がり、梅田の夜景が完全に見える形となった。このような視覚的な仕掛けも、なかなかにくい。とても印象的な演出であった。

アンコールは、ドゥリューム氏と金谷氏によるカルリを19世紀ギター二重奏で。19世紀ギターの柔らかく豊かな響きというのは、何とも心地よい。

この演奏会、タイトルの「ギターの非日常」が示す通り、ギターの様々な可能性を探求した内容であったが、どの曲・アレンジも決して実験的なものではなく、いずれもギターの強みを活かすことに成功したパフォーマンスであり、あらためてギターの魅力を再発見するものばかりであった。

この演奏会のケージ「風景の中で」を含む、金谷幸三氏の感動的なアルバムがあるが、現在は入手困難。

失われし望み

俺が叩いた。ポンタ、70年代名盤を語る

先日、村上”ポンタ”秀一の「俺が叩いた。ポンタ、70年代名盤を語る」を衝動買い。今、途中まで読んだところ。
俺が叩いた。ポンタ、70年代名盤を語る
なんかもう、あらゆるジャンルのミュージシャンの名前が出てきて、おもしろくてたまらん本である。ドラマーというポジションは、フロント楽器と違って、後ろから(あるいは上から)音楽全体を見ているという性格があるようで、単にドラムという楽器を叩くというプレイだけでなく、幅広い視点で音楽を捉えている様子がよくわかる。だから、この人の話は面白いのだ。

この本の前半は、赤い鳥や五輪真弓の話などが出てくる。赤い鳥つながりで、竹田一彦先生の名前も出てきてびっくり。あとは、赤い鳥のレコーディングでロスに行ったら、デビューアルバムの録音で来ていた五輪真弓が、そのデビューアルバムで共演したキャロル・キングを連れてきて、キャロル・キングが「これからダニー・ハサウェイのライブ聴きに行こう」と言うから一緒に行ったら、さらにジェイムズ・テイラー、カーリー・サイモン、カーペンターズが来て、みたいな、すごい話が続々と。

冬ざれた街/五輪真弓LIVE
その中で紹介されていたうちの一枚、五輪真弓「冬ざれた街」。このアルバムも、メンバーが豪華だ。村上秀一(dr)、深町純(pf)、石川鷹彦(ac-gt)、大村憲司(el-gt)、高水健司(ba)、村岡健(ss)。そして、そのサウンドは、深い。1970年代の、攻撃的で美しい音楽だ。

さて、この本、後半もなかなか面白そうだ。続いて読もうっと。