浦久俊彦「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか」を読んだ。正月休みにぶらっと書店に行って面白そうだと思って買ったものだが、なぜ面白そうだと思ったのかは、忘れた(笑)。最近、物忘れがひどくて自分でも心配だ。ま、それはいいとして(よくない)。
この本は、フランツ・リストが女たちを失神させた秘密を分析した本ではない。キャッチーな書名を決めたのは著者なのか出版社なのかわからんが、女たちが失神したメカニズムについて直接的に解説された箇所は少ない(一応、分析されてはいるが、本書の中心テーマとしては扱われていない)。基本的には、この本はリストの生い立ちから晩年に至るまでの生き様を綴った、伝記のようなものである。
これまで、リストには、天才・鬼才といったイメージを抱いていたのだが、この本で描かれているリストは、史上最強のピアニストでありながらも、心優しく包容力にあふれた人物である。本書ではそれを印象づける様々なエピソードが紹介されている。ショパンとの交流も、あたたかな友情によるものであったと考えられる。
結局、ピアノが巧いだけではなく、心優しい人物であったリストが、女たちを失神させるほどの魅力を放っていたということなのではないかと感じる。
日本ではショパンに比べて、評伝が少ないリストであるが、そのリストについて多くの情報を与えてくれる本であった。