「最も好きなギタリストは」と言われて、好きなギタリストはたくさんいながらも、即座に「○○が好きです」とか言えるほどに惚れこんでいるギタリストはいなかった。しかし、ある時期から、「Jim Hallです」と言うようになった。
どのアルバムをきっかけにJim Hallが好きになったのか、よく憶えていないが、以前このブログに書いたTake Tenあたりか。繰り返し聴くアルバムは、Take TenのほかにやはりUndercurrent、Conciertoといった古典的名盤である。
このUndercurrent。何度聴いても、飽きない。一曲目のMy Funny Valentine。Bill Evansとつぶやき合うようなフレーズで始まり、静かに、音楽が前進する。途中でかきむしるようなコンピング(これに魅了されたギタリストは多い)は聴く者の胸にグッと迫るものがある。
Jim Hallの演奏は、ジャズにおけるギターの在りかた、方向性を示してくれていると私は思う。コピーしてみると、あまり教本に載っているようなフレーズは出てこない。不思議なフレーズが多い。私には、パーカッション的にも感じられる。しかし、それがJim Hallが考える「ギターの立ち位置」であるように思える。ギターにしかできないこと、ギターにこそ求められていること、を追求し、表現しているのだと思う。決して、管楽器のようなソロを目指すことはしていないのだ(多分)。
聴きこんで、Jim Hallの考え方をさらに深く理解したい。「ギターとは?」ということを考えるためのヒントが、Jim Hallの演奏にはたくさん詰まっていそうだ。