秋になると、どうしても聴きたくなる、このアルバム。Kathleen Battle at Carnegie Hall。1991年のリサイタルの録音だから、もう20年も前なのか。私は学生だった1994年頃にこの盤を手に入れ、ボロ下宿のラジカセで、キャスリーン・バトルの澄んだ、限りなく美しい声に聴き入ったものだ。おそらくそれが秋だったから、秋になると聴きたくなるし、聴くと京都の紅葉を思い出す。
冒頭は、テレビCMで一世を風靡した「オンブラ・マイ・フ」。CMで流行った曲に聴き入るのはなんか悔しいのだが、ここはやはりひれ伏すしかない。潤いをもつ歌声に包まれ、鳥肌が立つ。いきなり聴く者を圧倒してしまう、あるいは虜にしてしまう魔法の歌声、これはいったい何なのか。
その後もモーツァルトのアリアやラフマニノフ、最後の方には黒人霊歌(これがもう、最高のセンス)まで出てきて、もうやられっぱなし。
ステージ外での行動についてはわりとネガティブな話が聞かれるバトルであるが、このCDにおけるバトルは、ひたすらに優しい歌声で聴く者を魅了する。このCDを手にして20年たったこの秋も、やはり私はこれを聴く。