中山康樹「マイルス・デイヴィス奇跡のラスト・イヤーズ」

マイルス・デイヴィス 奇跡のラスト・イヤーズ (小学館101新書)
中山康樹「マイルス・デイヴィス奇跡のラスト・イヤーズ」を読んだ。「帝王」マイルスが1975年に音楽シーンから突如姿を消してから1981年のカムバックを果たし、1991に帰らぬ人となるまでの激動の「ラスト・イヤーズ」がドラマチックに描かれており、一気に読破してしまった。

既に体がボロボロになっていたマイルスが、そんな彼を放っておけない周囲の人々に支えられながら遂に再び音楽にパワフルに向き合い、見事に復活。ひとたびステージに上がれば、病気の体に鞭打って延々と演奏を続けるという姿は、まさに「帝王」である。

過去を振り返らず、ひたすら前だけを向いてジャズという音楽を進化させ続けたマイルスが、その晩年に至ってもやはり前進し続けたドラマは、音楽ファンでなくても感動するはず。

プリンスとの交流やヒップ・ホップの導入など、マイルスの晩年の様々な逸話も紹介されており、ひたすら興味深い。

ジャズギター・ブック (Vol.7) Shinko music mook
ギタリストの視点では、このJazz Guitar Book Vol.7がめちゃ面白い。マイルスを支えたギタリスト達が多く取り上げられ、インタビューがあったり、分析されたりしている。

Ron Carter 「ジム・ホールの思い出」

ジム・ホールの想い出

先日も触れたが、Ron Carterの「ジム・ホールの思い出」。Ron Carter(ba)、Peter Bernstein(gt)、Larry Coryell(gt)。ジャケットもかっこいいので、大きめの画像を貼り付けちゃおう。

1月の亡くなったJim Hallとともに来日するはずだったRon Carterが、Jimとのデュオの代わりにトリオで来日し、追悼ライブを行ったものの録音。

とにかくめちゃくちゃ素晴らしい名盤だ。もう、一曲目With A Song in My Heartの冒頭から、心地よいサウンドにうっとりしてしまう。このトリオが生み出す空気に、一気に引き込まれてしまう。

Ron Carterの語りは初めて聞いた。渋い。

All The Things You Are、Alone Together、いずれも言うまでもなく素晴らしい名演。Alone TogetherはJim Hall、Ron Carterのデュオの歴史的な録音を思い出さざるを得ないが、ここでは、それに全くとらわれず、このトリオならではの音楽をこれでもかと展開してくれる。美しすぎる。

There Will Never Be Another You、この曲って、こんなにエレガントだったのか!どっちかというと楽しい、もっと言うと能天気な雰囲気の曲だと感じながら聴いたり弾いたりしてきたのだが。この演奏で美しく流れるメロディやソロを聴いて、大きく認識を改めた。

St.Thomasもアルバム”Alone Together”での名演に匹敵する美しい演奏。上述のAlone Togetherと同様、歴史的な名演に引きずられない新たなサウンド。どこかの楽園にいるかのような夢見心地で聴いてしまう。

最後はBags Groove。ジャズブルースかくあるべし、という見本のような演奏。ただただひれ伏すばかり。

ヘビーローテーションで聴きまくり。たまらん。

Jazz at Sanjo出演決定

京都三条で開催される「Jazz at Sanjo vol.13」にサブ会場で出演させていただけることとなった。サブ会場といえど、一定のレベルが必要のようであり、プロなどが出演されているもので、昨年はエントリしたけど不採用となり、今年もダメかなと思いながらエントリしていたのだが、採用された。2014年9月23日(祝)15:20~16:00、「ワインバーぼわーる」にて、野本千春(gt)、川村一郎(ba)とのトリオで演奏します。

ちょうど長浜の巴蕪亭ボンでライブのセッティングをしているときにメールに気づき、メンバ3人で喜んだ。Jazz at Sanjoに採用されたということは、演奏レベルが少しは前進しているということか。嬉しいが、気を抜かず練習しよう。

ライブ@巴蕪亭ボン

7月29日の晩、滋賀県長浜市の巴蕪亭ボンで、ライブを開催させていただいた。メンバーは、最近トリオとして活動している仲間の、野本さん(gt)、川村さん(ba)。

夕方、といっても明るい時間帯に、京都の伏見で野本さんを車でピックアップ。ギターとアンプも積んで、長浜に向けて出発。車中では、最近入手したRon Carterの「ジム・ホールの想い出」を鑑賞。これ、編成がベース+ツインギターだから、ちょうど我々トリオと同じなのだ。そして、何といっても演奏が素晴らしい。新たな名盤だ。

ジム・ホールの想い出
渋滞もなく、予定より少し早めに長浜に到着。あらかじめ野本さんがリサーチされていた料理屋で早めの夕食。鰻があれば食べようという計画だったが、この日は天然鰻の入荷がないとのこと。じゃあ、ということで鮒ずしを注文することに。実は私、生まれて初めての鮒ずしで、やや緊張。野本さんも鮒ずしは久しぶりとのこと。

運ばれてきた鮒ずし、恐る恐る食べてみたが、なんや、わりとクセがなく、食べやすいではないか。店のおかみさんによると、曽祖父さんの時代から同じ製法でつくっているそうな。そして、十人がつくったら十通りの味の鮒ずしができるらしい。

あとはビワマスと野菜の炊き合わせなど、美味しい料理を堪能。車を出して、いざボンへ。カーナビに入力して、驚いた。駐車場のほぼ目の前が、ボンなのだった。

野本さんと二人、ギターと荷物を担いで店に入り、ママさんに挨拶。セッティング。ママさん曰く「7時開演だと、あまりお客様が来ない時間帯です。ごめんなさい」。いや、お客さんが多いと緊張するから、少なくて結構です!いや、お店はそれじゃ困りますよね・・・

しばらくして川村さん登場。地元の顔って感じ。セッティングが完了したところで、まずはギターデュオで「いそしぎ」「ミスティ」。ミスティはお客さんも「これ好きやねん」と言いながら聴いてくださった。続いて、川村さんと野本さんのデュオでBeautiful Love。その後は、ベースも入ってトリオ演奏。休憩をはさみながら計3セットで、You Don’t Know What Love is、黒いオルフェ、Bop-Be、酒バラ、Softly, as in a Morning Sunrise、Stella by Starlight、Just Friends、There Is No Greater Love、野本さんオリジナルブルース、Bags’ Groove。

お客さんは少なかったが、楽しく演奏できた。とてもいい店だし、また出演したい。

再び、車で野本さんと京都へ。帰りも野本さんリクエストで「ジム・ホールの想い出」を聴き、あとは最近亡くなったCharlie Hadenなどを聴きながらジャズ談義。いやー楽しかった。

寺崎純&野本千春デュオライブ

寺崎純&野本千春デュオライブを聴きに行った。

野本さんは、最近トリオを組んで一緒に演奏させてもらっている仲間。寺崎氏は、言わずと知れた、京都を代表する巨匠ピアニスト。

会場は、京都の「てぃんがーら」。学生時代に住んでいた下宿から、少し北上したあたり。よく自転車でぶらぶらしたエリアだ。

この店は、京都の地ビール「一乗寺ブリュワリー」直営のビアダイニングとのこと。「てぃんがーら」とは沖縄の言葉で「天の川」のことだそうで、店の料理は沖縄のものが多い。

さて、実は妻が以前、寺崎氏にジャズピアノを師事していたこともあり、今回、家族でこのライブを聴きに行くことにした。

開演少し前に店に到着したら、既に席はだいぶ埋まっていた。飲み物を注文して、家族でカウンターに着席。ピアノのすぐ横で、ピアニストの手元が間近で観ることができる場所。妻は寺崎氏に挨拶したりしている。

せっかくの地ビールの店だが、車で来ているので飲めない。めっちゃ悔しい。沖縄料理も食べたいところだが、ビール飲めないと、ちょっとねぇ。ということで、アイスコーヒー飲みながら聴くことに。

Road Songから始まり、スタンダード中心のプログラム。デュオという編成ならではの対話風のセッションで楽しい。お互いに相手の演奏にフィットさせてゆく様が、心地よい。音量もバランス良く、素敵な店内の様子とも相まって、気持ちの良い時間を過ごすことができた。ピアノとギターはよく、音がぶつかるみたいな話があるが、このライブではそんなことは全く感じなかった。相互が無駄な音を弾かないから、というのもあるだろうし、野本氏のギターの音色がピアノの音色とぶつからないから、というのも要因かな。

満員御礼で、途中から入ってきたお客さんは、結局、入れなかったのかな。立ち見だったのかな。盛況であった。

Jazz Guitar Book Vol.36

jazz guitar book [ジャズ・ギター・ブック] Vol. 36 (シンコー・ミュージックMOOK)
Jazz Guitar Book Vol.36をAmazonで予約して入手。表紙は、ついに出た、Peter Bernstein。特集は「ビヨンド・ザ・バップ 新世代の王道ジャズ」。

毎号買い続けているJazz Guitar Bookだが、今号は特に充実しており、ジャズギター好きならば、絶対に「買い」だ。

何がそんなに充実しているかというと、まずインタビューがPeter Bernstein、Jesse van Ruller、Julian Lageといったストレートなプレイヤーに始まりWolfgang Muthspiel、John Mclaughlin、Robben Fordなどと多彩。

特集の「ビヨンド・ザ・バップ」では、上記の通りインタビュー記事が掲載されたPeter Bernstein、Jesse van Rullerをはじめとするギタリストのプレイのアナライズが紹介されており、これだけでもめちゃくちゃすごい情報だ。採譜もやはりPeter Bernstein、Jesse van Rullerなど。Paco de Luciaインタビューとアナライズがあるのも、これまた、いい。

菅野義孝師による「目からウロコ」シリーズは黄金コード進行編3「リズム・チェンジ」。これまた、すごい充実した記事で、ソロやコンピングのサンプルがみっちり紹介されていたり、練習のコツまでが記載されている。いいのか、こんなに書いてしまって!?

号によっては、さらっと読んで本棚に片付けてしまうことがあるこのムック、今号はこれからじっくりと読み、弾き、味わいたい。

Pat Metheny “UNITY BAND”

Unity Band
今さらながら、Pat MethenyのUNITY BAND。普段、あまり新しいアルバムって買わないから、このアルバムも発売から2年ほど経ってようやく買った次第。

日常的にPat Methenyはよく聴いているが、いやぁやっぱりこのアルバムも、イイ。アコースティックやピカソを含む複数の種類のギターを使い分けており、多彩なサウンドを順繰りに楽しめる。

オープニングの”New Year”で、一度聴いたら忘れられないようなマイナーキーのメロディアスなテーマとテンポよく引き継がれるソロで疾走感を味わい、いきなり引き込まれる。そこから最後の”Breakdealer”まで、高揚した気分のまま一気に聴いてしまう。

ドラムのAntonio Sanchezは、以前BuffaloでPat Metheny Trioのライブで聴いて、こりゃ上手いドラマーやなぁと思っていたらあれよあれよという間にビッグなプレーヤーになった。このアルバムでも、素晴らしいリズムと音色を聴かせる。Chris Potter、Ben Williamsともに男らしいプレイでグイグイと進んでゆく。

このUnity Bandの進化の先にあるUnity Groupの”Kin”も、聴いてみたい。でも、今はUnity Bandを何度聴いても楽しいので、Kinはしばらく先かな。

Kin

ミニ書斎をつくろう

ミニ書斎をつくろう (メディアファクトリー新書)
杉浦伝宗「ミニ書斎をつくろう (メディアファクトリー新書) 」を読んだ。

「ミニ書斎」というのは、著者による定義があるのだが、まぁ要するに小さい書斎、しかも男のための書斎というもの。本書では、具体的に「なぜ、ミニ書斎なのか」「ミニ書斎で何をするのか」「ミニ書斎をどこにつくるか」「ミニ書斎をどうつくるか」などが建築士の立場で述べられており、面白い。

ミニ書斎は、男の趣味のための空間であり、男が家族との接点を持ちながらも「籠る」こともできる場所。そこで趣味にそこそこ没頭することで、心をリフレッシュし、明日への活力を養うこともできる、というもの。

まぁしかし、そやね、男は書斎に憧れるし、そこそこ小さな空間に籠ることは心地よい。そこに書棚とか、好きなオモチャなどがあれば、本当に最高だ。この本では、あらためて、自分のそんな書斎への憧れを刺激されたし、自分でもミニ書斎をつくってみたくなってきた。

私自身は、趣味といえば音楽であり、まぁ書斎は持ってはいないが家の中でギターを練習したりする場所はある。リビングとして利用しているダイニングにも、自分の書棚として確保している場所があるし、自分の定位置もある。このブログもそこで書いている。これは自然発生して定着したミニ書斎なのだろう。これを発展させて、敢えてミニ書斎なるものを意識して設けたら、ひょっとしたら新しい世界が開けるのかもしれない。

びわこJAZZフェスティバル出演

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第6回びわこJAZZフェスティバルin東近江に出演させていただいた。

昨年に続き、2回目の出演、今回の会場はトライアングルというジャズバー。今年は、ツインギター+ベースという編成。ベースは既に何度か共演している川村一郎さん、ギターは野本千春さんと私。スタンダード中心のライブ。

家族と一緒に出発し、まずは東近江の蕎麦屋「藤村」で昼食。30食限定の十割蕎麦、美味い。店もとても綺麗で、雰囲気最高。ジャズの前に蕎麦っちゅーのは、とても良い(なんかテキトーに言ってるが)。

腹ごしらえの後は、出演会場のトライアングルへ。13:00から竹田一彦師匠がボサノヴァのヴォーカルとデュオをされるので、早めに到着。コーヒーを飲みながら、ボサミ&タケGの演奏を聴く。しっかし、巨匠・竹田一彦先生が軽ーく「タケG」って・・・。実際、「タケG」が竹田一彦先生のことだと知らず、あとで「聞き逃した!」と悔しがっている人がいた。そうは言いながらも、会場は満員。ボサミさんの落ち着いたヴォーカルと竹田先生の気合十分のギター、小規模なスペースで間近で聴けるのは幸せなことだ。これが無料で聴けてしまうのは信じ難いが、ここはびわこJAZZフェスティバルに感謝、感謝だ。

次のヴォーカル中心のバンドを聴いて、次が我々の出番。セッティング開始。ギター二人は落ち着いて準備するが、ベース川村さんは別会場で演奏して、20分で駆けつける。汗びっしょり。私のセッティングはというと、G#の音がものすごくハウる。ZT LunchboxのGainの調整でクリティカルなポイントを見つけて、ギリギリの目盛にセットする(結局、演奏中にどうしてもパワー不足を感じて、Gainも大きくしてしまったが・・・)。

セッティング完了し、演奏スタート。

  • Stella by Starlight
  • You Don’t Know What Love Is
  • Days of Wine and Roses
  • Black Orpheus
  • There Is No Greater Love
  • Blues in Bb

MCの段取りをしていなかったが、ギター野本さんがうまく話してくれたので、OK。演奏は、私がベースソロをすっ飛ばして4 barsに突入してしまったりしたが、何とか完遂。最後は時間枠ギリギリで、野本さんオリジナルのブルースは各2コーラスのソロで短く〆た。とりあえず、よし。

八日市駅から東へ続く通りでは、いろんな会場でジャズをはじめとるす音楽が聴こえてくる。聴衆は、ちょっと肌寒い中、立って聞いたりして盛り上がっている。ジャズフェスティバルは最高だ。

フェスティバル関係者の皆様、ありがとうございました!
自分の演奏は全然満足できるものではないので、また今日から、練習、練習。

澁谷盛良トリオwith小島のり子 at Yoshu Hall

澁谷盛良トリオwith小島のり子「春のジャズコンサート」、2014年3月23日(日)、Yoshu Hall(大阪)にて。

メンバーは澁谷盛良(ba)、矢藤亜沙巳(pf)、田村陽介(ds)、小島のり子(fl)。澁谷さんと小島さんは、ギター田口悌治師匠とともに小島のり子トリオとしてツアーで大阪に来られる際によく聴きに行くのだが、今回は澁谷盛良トリオとして来阪。

Yoshu Hallには初めて行ったのだが、何とも雰囲気の良いホールだ。木の香りが心地よいし、サイズがちょうど良くて、理想的な会場。飲み物が用意されていたので、それをもらって中に入る。BGMとしてCharlie Haden & Pat MethenyのBeyond The Missouri Skyが流れている。これまたええ感じ。

時間になって、メンバーが入場。澁谷氏の挨拶に続けて、演奏開始。スタンダード中心で、数曲はメンバーのオリジナル。

全ての楽器のバランスがとても良く、気持ちいい。ベースは重厚だが明瞭なサウンドでブンブン唸り、朗々と歌う。ピアノはとても滑らかで優しく、しかしダイナミック。フルートは潤いのある音色でグルーヴを生み出す。ドラムは出しゃばり過ぎずかっちりと刻む。大人のジャズだが、決して飽きがこない音楽だ。実際、2ステージ(休憩を含んで約2時間)があっという間であった。余計な緊張感がなくて、リラックスして聴ける演奏、理想的な音楽だ。会場の聴衆の表情も一様に、和やかであったのが非常に印象的であった。

澁谷さんがMCっていうのが、なんか意外な感じ。いつも大阪や和歌山で聴くのは小島のり子トリオでMCが小島さんだから。

終演後、澁谷さんと小島さんと少し話した。いつもセッションで迷惑をかけた後に会話をするから、あまりまともな心境で話せないのだが、今回はゆっくり話せた(笑)。夏には再び関西でライブとのこと。今から楽しみだ。

LUSH LIFE